空間の絵は、手の動き、表情でつくられる
手話の勉強をはじめて三年目。
緊張はしますが、ようやく一人でも手話イベントに出掛けること、ろう者の方と話しをするのも臆することが少なくなってきました。とは言え、当たり前ですが、まだまだ会話はたどたどしく、表現も読み取りも事欠くことばかり。早くうまくなりたい、どうして読み取れなかったのだろう、緊張して出来なくなってしまい悔しいと思うことは何度もありますが、単語や語彙を覚えるのは楽しいです。
英語などと違ってどうして楽しく覚えられるのだとうと考えてみたのですが、それは手話もほかの言語と同じように、その土地の文化の影響を受け、自然に作られた物なので、日本人として身近なものだからなのかなと。日本のろう教育に大きな影響を与えた、高橋潔と言う方がいます。「手話は空間の絵であり芸術である」の彼の言葉に、はっと胸を打たれ、いつか私も表現できるようになるのが目標。
きっかけはししゃもから。繋がるデンマーク
きっかけが面白かったり、なるほどと思えば思えるほど忘れないものですよね。
先日参加した手話イベントで、数字の手話を使っている単語を順番に表現するゲームを行いました。例えば、1の手話と同じ形状の単語は、言う、教える、サービス、きっかけなどが続きます。20名くらい輪になっているので、考えていたものが先に言われてしまい、「あーとられた!」なんてことは度々。ゲームは数字の1から9まで行いました。
そのなかで印象深く、面白い手話をご紹介。それは、「ししゃも」です。魚は辞書にも載っていますが、ししゃもは見たことがありません。
手話の単語には、なるほどっ!と思えるものがたくさんありますが、このししゃもも例に漏れず「なるほど」感の溢れる手話なのです。それは、「魚」の手話を指文字の「し」で表現すると、ししゃもにとなります。そして先日、調べていて気づいたのですが、ししゃもとは反対の方向に指文字の「し」を動かすと「デンマーク」になるんですね。こうして単語が増えていくのがとても楽しいです。「なるほど!」というきっかけから覚え、関連用語や形状の似ている手話に出会うと、私はスムーズに覚えられことがわかりました。
この記事だけでも、魚、ししゃも、デンマーク、指文字の「く」と「し」を覚えることができます。
好きをかたちにしていきたい
私も習いはじめてからわかったことですが、手話にも方言があり、地域ごとに表現が違います。もちろん、世界共通ではありません。手話そして、ろう文化を知らない方から「手話が世界共通になったら普及も早いし、便利だと思わない?」と言われることが意外と多いです。
しかし、それってとても失礼なことだと思うんです。
口語は世界共通の方がいいからって、日本語をなくして英語に統一しようなんてなったら、大問題ですよね。母国語というものは、その言葉を使う地域の文化や歴史の影響を受けて創られますし、変化もします。日本語には日本人という個性を示すように、日本手話を使う日本人も同じです。日本の文化や歴史から、日本手話も作られていることを知ってほしいですし、普及が必要です。
手話が普及し、使える人が多い方が便利だと思いますが、ろう者の世界だけ、言語を統一したほうがいいなんて考えは、聞こえる側の立場だけの考え。便利だからといって、他者のアイデンティティを奪うようなことはできませんよね。
手話に興味を持てるような、「手話×デザイン」の組み合わせで、’n’らしい企画を考えていきたいと思います。
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