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和食に合う香味野菜 ミョウガを漬け酒に

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果物を漬け込んだお酒を果実酒というように、野菜を漬け込んだお酒を野菜酒と言います。以前から野菜や薬草の漬け酒に挑戦してみたいと思っていました。この夏、初挑戦したミョウガの漬け込み酒は、なかなか面白い結果に。

和食に合う香味野菜 ミョウガを漬け酒に

例によって具材を「生」と「ドライ」で漬け比べをします。使用する銘柄はカシャッサの「ウェーバーハウス・シルバー」です。

生で漬けるミョウガは、洗ってから水気をふき取り、縦に刻んでそのまま漬けます。
ドライにするミョウガは、さっと茹でてから水気をふき取り、縦に刻んでフードドライヤーで乾燥させます。一度茹でることで色鮮やかなミョウガになります。乾燥が進むと、外皮の部分がハッとするような鮮やかな紫色に。漬け込んで数日後、紫色がお酒に溶け込んで全体が淡いピンクと紫の中間のような色に変化していきます。

漬けたボトルの瓶を並べてみると、生ミョウガのボトルは清く白さが際立っています。双方を並べた出で立ちは、まるで涼しげな夏の着物のようで、清涼感のある香りが心地よく、まさに「和」を感じる漬け酒です。

最後はオレンジゼストで柑橘の風味を加え、夏らしい茗荷の漬け酒が完成しました。生ミョウガは、鮮明でキリッとした印象。そしてドライミョウガは、ややまろやかで余韻があります。どちらもおいしく仕上がり、日本酒感覚で和食とのペアリングにも合いそうです。生とドライを食事に合わせて使い分けても楽しいと思います。

ミョウガの漬け酒レシピ(小瓶タイプ)

ミョウガの漬けカシャッサ(カシャッサパンチ)はこちらをご覧ください。

身近にある茗荷のお話

僕は画家でアトリエ兼ギャラリーを運営しています。 そのギャラリー内には併設のバーカウンターがあり、多目的スペースや漬け酒研究室としても活用しています。作品の展示・販売、制作に加え漬け酒の研究と、この夏はほぼ毎日を同じ空間で過ごしているので、自然と自炊する機会が増えてきました。

作業の合間に手早く作れる料理となるとパスタ、うどん、そうめんといった麺類が中心になるのですが、冷たい料理を食べる時にはやはり薬味が欲しくなりますよね。ネギや生姜、大葉、かつお節、海苔、あとは茗荷があるとさらに嬉しいです。

ところで茗荷(ミョウガ)って変わった響きの名前ですよね。調べてみると茗荷にまつわる、とてもいい話を見つけたのでご紹介します。

その昔、お釈迦さまの弟子で、その中でも最も愚かだといわれていた周利磐得(しゅりはんどく)というお坊さんがいたそうで、彼は自分の名前もろくに覚えていられないほど。なので、お釈迦さまが自分の名を書いてくれた布をいつも身につけていたそうです。当然ながら、その他のこともうまくできないので、仲間からも馬鹿にされ、蔑まれていました。

苦悩した彼はついに弟子をやめてしまおうと願い出てしまいます。そうしたところ、お釈迦さまから「自分の一番好きなことは何か」と問われ、彼は掃除だと応えます。すると、お釈迦さまから一枚の布を渡され、ならば、その一番好きな掃除のみを「塵を掃わん、垢を除かん」と唱えながら続けるように命じられ、その後、彼は一心不乱にそれをやり続けます。

その彼の姿に、最初は馬鹿にしていた周囲の者達も見方を改め、やがては阿羅漢の悟りを開くまでになったのだとか。「阿羅漢」とは不浄を取り除くことだそうで、まさに掃除にぴったり。お釈迦さまの粋なお導きだんですね。

そして、ついには自分の名は覚えられないまま生涯を終えた彼の墓に生えた見慣れない植物は「名を背負い歩く人」という意味で茗荷と名づけられたそうな。

いやぁ、いいですね。
「余計なことは忘れて、自分の好きなこと、大事なことを一途にやり続けることで悟りを開く」なんて、なんと素晴らしいことでしょう。何事においてもやり続けることで見えてくるものってありますよね。個人的にも励みになるお話です。

また、この逸話の物忘れの部分だけが取り上げられて「茗荷を食べると物忘れがひどくなる」と伝わり、それに紐づいた落語の「茗荷宿」という噺もあります。しかし実際は、茗荷の香り成分には、むしろ「集中力を高める効果」があるという研究結果がでているとのこと。

多様性を求められ、それぞれの在り方が問われる今の時代、何に重きをおくのか、物事の見方、捉え方についてもあらためて考えさせられます。

執筆者:漬け酒研究室 山本浩二

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