「人喰い」読了。
この作品をきっかけに上村一夫を知りました。
実は、劇画は好みかというとちょっと違います。作品よりもどんな人だったのかを調べていたら、どんどん絵に惹き込まれてしまい、作品を読みたい気持ちが増幅していった方です。
昭和の絵師と呼ばれ、女性を描くことにこだわりを持っていたわけですが、作品を見ていると、不思議な魅力に目が離せなくなります。強い女性も弱い女性も、どれも心にひっかかるものばかり。昭和を感じさせる作品から、今見ても古くないポップな作品まで幅広く、見ていて飽きることがありません。
さて、人生初の上村作品「人喰い」。
1971年1月から、漫画アクションで連載がはじまった「人喰い」は、芸能界で成り上がっていく貪欲な女性の話。原作は、作詞家の阿久悠です。
喰われる人間と喰う人間がいるなら、私は喰う人間を選びスターを目指す主人公の那美岐。しかし那美岐も最後は喰われる側へとなってしまいます。多少の欲は人を成長させるのに必要なもの。けれど強欲なまでの欲深さは満腹になった途端に、他のものに喰われてしまう。強欲とは自らを滅ぼしてしまうほどの強いものなのでしょう。
そして驚き入ったのは、このすさまじい芸能界の話しを、多くのスターを輩出したオーディション番組「スター誕生!」が始まる数ヶ月前に書き下ろしたことです。那美岐のような、貪欲なスターをどこかで求めていたのでしょうか。
劇画の魅力
上村一夫の公式サイトの上村裏日誌では、これまでの作品がちらちらとアップされているのですが、「劇画レシピ」の編集が気に入ってしまいました。昭和49年1月1日発行の別冊 女性自身「COOKING BOOK 冬号 男が好きな料理と酒のさかな126種」の中の「劇画実用 これだけで料理上手になれる『基礎とコツ』」」のページで、挿絵を上村氏が担当しています。
夕飯のお支度をしている女性の絵。包丁のアップや夕日、寂しげに見える女性と支度が終わったころに登場するお姑。これから何かが起こりそうな緊張感のあるページなのですが、内容は、まじめに調理の基本やコツが淡々と書かれています。読んでみると、なるほどと思うこともあり、巻きすで野菜の水気を切るとか、勉強になりました。
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